artspace and cafe

2023.1.7(Sat)-2023.1.22(Sun)

11:00~18:00(最終日は16:00 まで)

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小倉孝夫の白


 絵画表面に表出する「白」には、多くの油彩画に見られるように白い絵の具が置かれることによって生まれる白と、 水墨画のように絵の具(墨)が置かれないことによって生まれる白とがあるが、 小倉孝夫の白は水墨画のようにそこに絵の具が置かれないことによって生まれる白である。 そのため小倉の絵画はいわゆる油彩画の持つ一種重苦しい空気ではなく、軽やかで透明感のある空気を持つ。
 小倉の描く形体は立方体や椅子などいわゆる無機的な形体が多い。 それはあたかも三次元に存在しているように描かれるが、描かない白を残しながら細い線や小さな点で描かれるために、 境界は常に曖昧で形体の内と外とを繋いでいる。そのことでこれら無機的な形体は、あたかも有機的な呼吸をしているように見える。 それは人の皮膚が内と外との境界でありながら、常に水分を発散し酸素を取り入れる曖昧な境界であることに似ている。 現在、人間が作り出す様々な化学物質に深く絡みつかれてしまった自然というものを考える時、 有機的自然と無機的人工物とを区別することはすでに無理なのだと考えざるを得ないが、 小倉の描く無機的かつ有機的な絵画世界は、この現実世界の小倉なりの比喩のようにも思える。
 このような小倉の絵画を白い壁に掛ける時、描かれなかった白がバックの白い壁に溶け出し、 壁の白が絵画のなかに流れ込んでくる。それは絵画と壁の呼吸といえる。 絵画という人工物が白い壁という人工物と有機的な呼吸を始めるのだ。

岩本圭司 

(本展プロデュース/造形家・artspace&café代表)



小倉 孝夫 Takao Ogura
1955年 栃木県生まれ
1985.90~2001年まで 櫟画廊 ( 銀座 ) にて毎年個展
1993~95年 TAMON 賞展 柏市民ギャラリー
1998年 毎日現代美術展 東京都美術館、京都市美術館
2001年 千年の扉 栃木県立美術館
2001~22年まで 毎年日仏現代国際美術展 大森ベルポート、東京都美術館、新国立美術館
2022年 外務大臣賞
2004年 個展 galerie lichtblick(ベルリン)
2009.10.11.16年 ART WAVE 滋賀県立近代美術館
         せんだいメディアテーク、福岡アジア美術館他
2010年 アートフェア上海貿易センター (上海)
2017年 青木繁記念大賞西日本美術展 久米美術館