2021.9.23(Thu)-2021.10.10(Sun)
11:00~18:00(最終日は16:00 まで)
月・火曜休廊(月・火が祝日の場合は営業し、翌日休)
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昨年、石井克氏の展覧会「石井克の鳥」を開催させて頂いた。鳥の姿を借り、重厚な生命感を
秘めて「森」とタイトルされた作品群を展示したのだが、その作品たちは皆、長い時間の積み重
ねを内包していた。それは氏が作品の完成という概念を持つことなく、一度発表した作品であろ
と構わずまた新たに絵具を塗り重ね、常にそこに変容を与え続けてきたからである。そこにはお
のずと蓄積された時間が存在し、人が常に変わり続けながら生きるように、作品そのものが変化
を続けて生命体のように存在する結果となった。またその画面をよく見てみると、描かれた鳥の
中に、生命の体内組織とおぼしき細密描写が見え隠れする。それが作品に十分な深みを与えてい
るのだが、それはその「鳥」の絵の下地となっている、以前に描かれたある種異様な「生き物」
の姿なのである。
氏は長年養護学校の教諭をしてきたが、子どもたちのこととなると話が終わることがない。氏
自身も語るように、底知れぬ魅力を放つ彼らから受けた影響は計り知れない。ある意味、一般社
会から「歪み」を押し付けられた場で放つ彼らの生命感、そういう場で長期にわたり時間を共に
することで、氏の「生き物」は産み出されていった。ただそこに卑しいという感じは一切なく、
強く感じるのは「生き物」全てが本来持っているはずの「生きる姿」だ。
氏は「自分は影響を受けやすい人間」だという。しかし、それはおそらく悪い事ではない。そ
ういう人間だからこそ、この特異な「生きもの」が産み出されたのだと思うし、養護学校の子ど
もたちの「命」を氏独自の方法論で示してくれたのだともいえる。
岩本圭司(造形家・artspace & café 代表)