artspace and cafe

2022.6.29(Wed)-2022.7.3(Sun)

11:00~18:00(最終日は16:00 まで)

flyer_omote

※画像クリックでPDFが開きます

アニミズムのまなざし


 『絵のない絵本』というタイトルが気になってアンデルセンを読む。と、興味深い話が目に入る。 四つになる女の子が帽子と衣服を新調して貰った嬉しさから母にいう。「あたしがこんなすてきな着物を着ているのを見たら、犬たちなんて思うかしら!」 (矢崎源九郎訳)この話を伝えてくれるのは月。私はいつの間にか空想の絵本を読み始めていた。「絵本をみる眼」がいくらか成長しているようだ。
 今から三年ほど前、絵本がいきなり視界に入ってきた。はじめは手探りだったが、絵本に明け暮れる日々の中で、ある「発見」が生れた。 それはこちらのまなざしの成長に呼応するように出現して来た向こう側のまなざし。親しむ中で絵本がはるかに呼び寄せてくれた世界だった。 何もそれは隠れていたわけではない。絵本の世界では、むしろ大手を振って物語を突き動かしていた力である。 それを「アニミズム」といえば大掴になるが、異種間に開かれた交渉の回路が見えて来た。古代、岩や草木が物言う世界があり、人々は耳を傾けた。 翻訳技術にたけていた。そんな失われたかと思われた世界が、絵本には息づいているのだった。今回、心に残った本を展示する。 どんな交響空間が出現するのか、「絵本の大陸」(堀内誠一)の新米フィールドワーカーとして楽しみにしている。
 おわりに記しておきたいのは足利市立美術館の意欲的な活動である。三年前のインドの「タラブックス展」が端緒となり、つづくいくつかの絵本展が、 私の絵本への関心を加熱させた。美術館の企図がなければ、絵本とは無縁に過ごしたに違いない。その感謝の思いをこめて…。

川島健二(本展企画者・民俗学)


川島健二 Kenji Kawashima
 1950年群馬県生まれ。民俗学、柳田国男研究をベースに、アイヌ・沖縄文化に関心を寄せるかたわら、美術に親しむ。『谷川健一全集』全24 巻(冨山房インターナショナル)編集。
主な図録執筆:「沖縄展」(群馬県立歴史博物館)、「飯田善國展」「牧島如鳩展」「スサノヲ展」「長重之展」「吉増剛造展」(以上、足利市立美術館)、「中央関東の現代美術展」(群馬県立館林美術館)など。邑楽町文化財保護調査委員。

●本展ではご自由にご覧いただける150点ほどの絵本の展示を行います。


■対談■
7月2日(土)15:00~
絵本にみる「シンデレラ」の表象、その他
・山下彩華(足利市立美術館 学芸員)・川島健二(民俗学)
要予約/無料