岡野 信展
Fresh Start
2023.4.19(Wed)-2023.4.23(Sun)
11:00~18:00(最終日は16:00 まで)
月・火曜日休廊
軽食とソフトドリンクもお楽しみいただけます。
※画像クリックでPDFが開きます
Fresh Start
今回の個展は私の初個展であり、現在の到達点です。
描いた作品は翌週には至らぬ点ばかりの物に成り下がりますが、
見た方に少しでも描いた時の心持ちを感じて頂けたら幸いです。
そして再出発するにあたり、菊地武彦先生という線の魅力を追求する画家の教えを乞うことが出来たのは正に幸運でした。
数段の飛躍と新たな視点を得ることが出来、創作の糧となりました。
個展開催にあたっては写真撮影や幾多のアドバイス、更に文章をも寄せて頂き、多大なる御支援を頂きました。ここに感謝申し上げます。
「描くことの喜び」-岡野信の作品について-
菊地武彦
時折「絵の始まりは」とか「芸術や絵とは何か」という根源的な問いに立ち向かわなければならないことがあります。
例えば絵画の始まりを探るのに適した洞窟絵画には、祈りの要素が色濃く表れています。
しかしそこには同時に、意味不明の抽象的図形も描かれていることはあまり知られておりません。
また洞窟では絵画以外に動物の骨などで作った彫刻も発見されていますが、ブラッサンプイ出土の女性頭部像のように解釈に困る作品がいくつもあります。
これは生きることの複雑さを表しており、そのことが作品に幅と奥深さを与えているのです。
岡野の作品を語るのに長々洞窟絵画を引用したのは、岡野作品が原始美術と同じく一つの概念でくくれない要素を含んでいるからです。
岡野は様々な形式の作品を作ります。具象から抽象まで形式による縛りがなく、しかもどれも岡野流の作品です。
多形式の中で共通していることは、色と形(時には触覚なども)が自由に出会う喜びがあることです。
モデルがいるときはモデルによって、植物があるときは植物を借りて、何もないときは白い画面と描画材料との出会いで作品が生まれます。
その時その場での出会いが作品を作るモチベーションとなります。出会いはおそらく一瞬の直感的なものでしょう。
ですから積藁を前にモネがしたように、素早く描き留めなければなりません。
モチーフや材料と関係を結びながら、今ここにある身体が絵画として定着されるように筆を走らせるのです。
実用から考えれば、芸術は存命することに直接関わらず無駄といえる範疇に入ります。
それでも描く人は誰に強制されるわけでもなく描き続けます。
それは描くこと自体がその人の生とつながっているからです。
岡野の作品からは、確かに描くことが喜びとして立ち現れています。
多摩美術大学絵画学科教授