artspace and cafe

大竹清仁展
四季の夢

2023.4.29(Wed)-2023.5.14(Sun)

11:00~18:00(最終日は16:00 まで)
月・火曜日休廊
軽食とソフトドリンクもお楽しみいただけます。


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剥ぎ取られた色、剥ぎ取られた線

 大竹清仁の絵画はどこかエゴン・シーレを思わせる雰囲気を持っているが、シーレほど 退廃的ではなく、もう少し動的で軽やかな花の香りがする。後に彼が美容師でもあること を知ったのだが、これが彼の女性に対する皮膚感覚、対象物との距離感なのだろうと感じ させた。
 絵画は多くの場合、白い下地(油彩であればキャンバス)にさまざまな色を塗り重ねる ことによって生まれる(時に塗り重ねた色を一部削り取ることもあるが、それも色を塗り 重ねる作業の一部だろう)。大竹の場合も間違いなく色を塗り重ねることによってその絵画 が成り立っているのだが、見た目の印象はそうではない。そこに存在していたであろう多 くの色や線がゴッソリ剥ぎ取られてしまった「残骸」あるいは「かけら」のように見えるのだ。 それ故廃墟のような乾いた空気を抱えながら剥ぎ取られたばかりの表面の生々しさという ものを併せ持つ。特に殆ど剥ぎ取られてほんの微かに消え残ったように描かれる線は絵画 表面から静かに立ち上がろうとしているようにも見え、とても魅力的だ。この線が彼の絵 画のすべてを支えていると言っても良い。
 このような彼の絵画をなんと表現したら良いのだろうか。本来色 を重ねていくことはプラスの作業の筈なのだが、彼の場合はそれが マイナスの作業のように作用する。目の前に在るのは、マイナスを 幾重にも重ねた世界であり、それが震えや切なさや愛らしさを産み 出している。かといって絵画自身は自らの存在を痛んでいるように は見えない。痛んでいるのはむしろこの絵画を見ている私たち自身 だろうか。

※大竹清仁画集『/○』より抜粋
岩本圭司(造形家・artspace & café 代表)




大竹清仁 Kiyohito Ootake
1972 群馬県生まれ
1994 群馬県美容高等専修学校卒業
1999 rrecordz 創立
2011 セツ・モードセミナー卒業
2016 亀山知英氏に銅版画を学ぶ
2020 渡仏
詩人画家・日本美術家連盟会員
【受賞歴】
2011 セツ展 ターナー賞受賞
2018 第53回一期会 新人賞受賞
2021 第55回一期会 評論家中野賞
2021 第72回群馬県美術展覧会 奨励賞