吉増剛造展
─火の言葉だけが残った─
2024.5.25(Sat)-6.23(Sun)
11:00~18:00(最終日は16:00 まで)
月・火曜日休廊
軽食とソフトドリンクもお楽しみいただけます。
※画像クリックでPDFが開きます
詩集『Voix』を世に出したあと、吉増剛造には、詩はもはや「白い言」、つまり詩稿を燃やし
た後の「灰」であるほかないのかもしれない。拙著『全身詩人 吉増剛造』はそう結んだ。
郷原佳以が言うように、吉増のテクストにおいて、エクリチュールの時間は「いま・ここ」
において更新され、無限に多層化されている。しかし、「いま・ここ」という指呼詞はいくら
書き換えられても、決して「いま・ここ」を指し示せない。吉増には大事なものがある。「「日記性」
「手紙性」「独言性」「親友の名」乃消えないようニ、残りますようニ、と心懸けラレた」とある、
それらはとても大切なもの、つねに「いま・ここ」に保持したいものである。では、どうするか。
燃やすよりないだろう。
灰にするよりない。J・デリダ『火ここになき灰』の解説で、梅木達郎はこう述べた。「灰と
はなにものかの名残や記号ではなく、なにかが取り返しようもなく失われてしまったことの
痕跡である。失わないために、保持するために、すべてを燃やすこと」。そう、デリダに共鳴
する吉増もまた、かけがえのない草稿を燃やそうとするだろう。G・アガンベンは、前衛芸
術における芸術家による行為の遂行をカソリックの典礼になぞらえて、それが作品でもある
とした。ヨーゼフ・ボイスが、ウサギの亡骸を抱えて、絵の前で「美術とはなにか」をウサ
ギに教え込もうとふるまう。その行為が作品であるなら、草稿を燃やす吉増のふるまいもまた、
詩なのではないだろうか。火の言葉だけが残った──足利のartspace&café の一画で、それ
を確かめてほしい。
林 浩平(詩人・文芸評論家)
吉増 剛造 Gozo Yoshimasu
1939年東京生まれ。慶應義塾大学国文科卒業。在学中から詩作を始め、
1964 年の第一詩集『出発』以来、先鋭的な現代詩人として国内外で
活躍。同時に詩の朗読パフォーマンスを行い、80 年代からは銅板に言
葉を刻んだオブジェや写真作品を発表。2016 年には個展「声ノマ全
身詩人、吉増剛造展」を東京国立近代美術館で開催。2017~18 年には、
個展「涯テノ詩聲(ハテノウタゴエ)」(2018 年)を足利市立美術館、
沖縄県立博物館・美術館、渋谷区立松濤美術館で開催。2018~19 年
には、福島県内の3 館、福島県立博物館、はじまりの美術館、埴谷・
島尾記念館文学資料で吉増剛造展を開催。2019 年、Reborn-Art
Festival(石巻市)に参加。2020 年より、「葉書ciné」をYouTube
にて配信。2021 年『詩とは何か』(講談社現代新書)『Voix』(思潮社)
出版。2024 年『DOMUS X』(コトニ社)出版。
■ライブパフォーマンス■
出演:吉増剛造
日時:5月25日(土)15:00~
参加費:2,000 円(ワンドリンク付)
定員:30名※要予約
お問い合わせ:artspace & café
0284-82-9172