吉増剛造展 ウラウエノウミツチ
2020.4.4(Sat)-2020.6.14(Sun)
11:00~18:00 ※営業時間を1時間短縮しています。
月・火曜日休廊
軽食とソフトドリンクもお楽しみいただけます。
■映像UPしました■
2020年4月11日に無観客開催しました「吉増剛造-公開制作 in artspace & café」の映像をYouTube動画サイトにUPしましたので、お知らせいたします。
現代詩手帖に連載の「VOIX/声 V」のお話や群像に掲載の古井由吉さんに向けた追悼文のお話なども伺えます。
是非ご高覧ください。
https://youtu.be/iGEHTKIvUFM
2020年6月13日、artspace & caféにおける詩人吉増剛造氏の公開制作VOL.2を行いましたので、お届けいたします。下記URLでご覧いただけます。
https://youtu.be/a9cdPwTgVTY
■会期を再度延長しました■
吉増剛造展の会期を6月14日(日)まで延長することにいたしました。新型コロナウイルス禍、外出などが可能になりましたら是非ご高覧頂きたく思います。
artspace & café 岩本圭司
※画像クリックでPDFが開きます
2019年8月26日、宮城県石巻のさらに奧、牡鹿半島突端に近い鮎川に、詩人・吉増剛造を訪ねた。Reborn-Art Festival のために公開もされていた、間近に海を臨むホテルの居室は、二ヶ月あまりにおよぶ滞在を経て、日々の創作が行われる最も身近な書斎と化し、色とりどりのマーカーで筆記がなされた窓から入る陽光を受け、机上のさまざまな筆記具や執筆途上の原稿が静かに光っていた。
この部屋では、机上の原稿に記されたことばとガラス窓への筆記は、眼の前に広がる海へ呼びかけるようにして重なり合い、足許にある陸と視界の先の海とが一体になっていく感覚が高まっていくのを感じた。
かつてここは大津波にさらされ、陸は海と一つになり、その記憶が場所と人に今なお刻まれている地である。そうした記憶を辿り、鎮める意味を、ここでの吉増の日々は持っていたのではなかろうか。
机上には原稿とともに、鯨の歯がいくつか並べられていた。この日の朝に、ホテルの前の浜で解体が行われる中で手にしたものだという。吉増の作品にたびたび現れてきた鯨。陸に上がる間際まで、からだの一部として海中のものであったその欠片は、原稿とともに在ることで、海の祭祀に使われてきた小さな神器にも見えた。
鮎川から足利へ。原稿と筆記により海の記憶がもたらされることで二つの地はつながり、新たな場所と日々がつくり出される。
それは私たちの意識の内に、海と陸が、今、穏やかに交じり合う光景を呼び起こしてくれるだろう。
足利市立美術館 学芸員 篠原誠司