石井克作品展 石井克の鳥
2020.8.8(Sat)-2020.8.23(Sun)
11:00~18:00(最終日は16:00 まで)
月・火曜日休廊 ※10 日( 山の日・月)は営業し、11 日(火)、12 日(水)がお休みになります。
軽食とソフトドリンクもお楽しみいただけます。
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石井克氏は養護学校を勤め上げた画家である。この度、著書『表現と自立』をご恵与いただき拝読した。描くことにより成長していく子どもたちの様子や、障害に立ち向かい命を燃焼させ描き切った少年、少女たちの記録がつづられていた。掲載された彼らの作品に、描くことにより輝きを増す魂を感じて震撼した。そして氏の制作の背後には、この底知れぬ深淵、深い森がひかえていることを知った次第である。氏の作品には「森」と名付けられたものが多く見受けられる。生きる力をもたらす芸術のはたらきは森に例えられる。森はさまざまな「尺度」、時間によって営まれている。天に伸びる大木もあれば、地面を覆う苔もある。どちらが優れているというわけではない。しいて言えばどちらも優れている。それらが排除し合うことなく、いわば、いろいろな「響き」を奏でている。だから森に入ると人の心は和やかになる。人の心も体もさまざまな要素によって成り立っており、それぞれがそれぞれの響きに共鳴しているからだ。芸術もまたさまざまな「尺度」を持つ「森」なのである。それは自在であり、自由であり、作る側と受ける側の心を解き放ち、生きる力を与えてくれる。
氏はそのことを深く理解している。氏は子どもたちに表現の手立てを示し、生きる力をはぐくんできた。そして自身もまた彼らから力を得た。それは希望の光であった。
石井氏の作品には鳥が登場する。鳥は画家自身の分身と思われる。たいてい翼はなく、人のような足がある。なかには体全体を開いて、力の限り啼いているものもある。この鳥は芸術という森の住人であり、その在りかを告げている。森( 芸術) を知った者の使命として啼き続けているのである。
江尻 潔 (足利市立美術館次長)