artspace and cafe

乾久子展 透過する視点

2020.10.24(Sat)-2020.11.8(Sun)

11:00~18:00(最終日は16:00 まで)
月・火曜休廊(月・火が祝日の場合は営業し、翌日休)
軽食とソフトドリンクもお楽しみいただけます。

11月7日(土)アーティストトークを開催しました。
乾久子×さとう陽子 『絵のことば、間の話』動画をYouTubeにアップしたのでご高覧ください。
https://youtu.be/NVpQ0ZxhMrE

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※画像クリックでPDFが開きます

「人は自分の身体の中に内臓を持っていることを自覚している。しかしおそらくもうひとつの見えない内臓を身体の外に持っている。それは薄い被膜のようなもので丸く自分の身体を包み込んでいる。」こんな文章を以前、はじまりの美術館(福島県)の展覧会評で書きました。眼を開けると、自分の周りの世界が見えます。上下、左右へ首を回せば、自らが作り出す丸い映像に自分は取り囲まれているのだということに気付きます。そこに見える世界とはいったい何なのか。見えているのは、ものから跳ね返された光の反射であって、ものそのものではありません。その映像はあくまでこの世界の擬似的な把握に過ぎないのです。
乾久子の作品に触れたとき、「自分の身体を包み込む丸い被膜」と書いたことを思い出しました。彼女の描く繊細で温かさと冷たさを併せ持つこの幾多の線が、まるで丸い被膜に張り巡らされた神経細胞のように見えたのです。人は自分を包む丸い被膜の外の世界をうまく把握することができません。被膜の外に広がるおそらくより確かな世界を感覚することができないのです。
彼女は無意識にこれらの線を描いているのかも知れません。彼女自身、自分が何を描いているのか理解していないかも知れません。しかしだからこそ、これらの線(張り巡らされた神経細胞)がこの被膜をうまく通過し、向こう側の世界に触れる可能性を持っているのではないかと思うのです。

造形家・artspace & café 代表 岩本圭司



乾 久子 Hisako Inui

1958年静岡県に生まれる。東京学芸大学大学院修士課程修了。
1990年代後半から浜松を拠点に作家としての表現活動を始める。国内外での個展グループ展多数。心身から線を生み出すドローイングを制作の基本としているが、言葉の素描、ブックアートなど、表現 の素材、方法は多岐にわたる。ことばと絵で美術と社会をつなぐ『くじびきドローイングワークショップ』を全国各地で展開している。
●公式サイト
「乾久子の仕事」http://hisakoinui.com
「くじびきドローイングのすべて」http://kujidoro.net